実質消費は8か月連続減 家計は何を減らし、何には使っているのか

実質消費は8か月連続減 家計は何を減らし、何には使っているのか 社会と家計

総務省が2026年9月4日に公表した7月の家計調査では、二人以上の世帯の消費支出は1世帯当たり301,245円でした。

前年同月と比べると、名目では1.5%減、物価変動の影響を除いた実質では3.6%減です。

実質消費支出が前年を下回るのは、これで8か月連続となりました。

「実質3.6%減」という数字だけを見ると、家計がさらに支出を抑えているようにも見えます。

ただ、内訳まで確認すると、少し違った姿も見えてきます。

今回は、何が消費を押し下げたのか、日常的な支出も減っているのか、所得はどうなっているのかを順番に見ていきます。

実質消費は8か月連続で前年を下回った

二人以上の世帯の実質消費支出は、2025年12月から2026年7月まで、8か月連続で前年同月を下回っています。

単月だけの変化ではなく、消費が前年より弱い状態が続いていることは確認できます。

2025年12月から2026年7月まで、二人以上の世帯の実質消費支出が8か月連続で前年同月を下回ったことを示すグラフ

※2026年1~6月は、2025年基準の消費者物価指数を用いた遡及改定後の値。

一方、前月との比較では少し違う動きです。

季節要因を調整した実質消費支出は、6月に前月比6.3%減となったあと、7月は0.5%増えました。

7月に消費がさらに急落したというより、前年に比べて弱い状態が続いていると見る方が近そうです。

3.6%減には、自動車や住宅修繕の影響も大きい

では、7月の実質3.6%減を押し下げたのは何だったのでしょうか。

総務省が示す主な減少項目を見ると、自動車購入や、外壁・塀などの工事費が大きく影響しています。電気代も消費支出を押し下げました。

自動車や住宅修繕は、食料品の購入のように、多くの家庭で毎月ほぼ同じように発生する支出ではありません。

前年に自動車を購入した世帯や住宅工事をした世帯がどの程度あったかによっても、月ごとの数字は大きく動きます。

そのため、「実質消費3.6%減」を、そのまま「家庭が日常生活で3.6%節約した」と置き換えることはできません。

変動の大きな支出を除いても、消費は前年を下回った

家計調査には、通常の消費支出とは別に、「住居等を除く消費支出」という数字も掲載されています。

ここでは、住居のほか、自動車等購入、贈与金、仕送り金などを除いて消費の動きを見ることができます。

7月の消費支出全体は実質3.6%減でしたが、住居等を除く消費支出は実質1.4%減でした。

2026年7月の消費支出は実質3.6%減だが、住居や自動車購入などを除く消費支出でも1.4%減だったことを示す図


消費支出 実質 ▲3.6%

自動車購入や住宅関連など、変動の大きな支出を含む

住居等を除く消費支出 実質 ▲1.4%

大型支出の影響が大きかったことは分かります。

ただし、それらを除けば消費が増えているわけではありません。

変動の大きな支出だけで、現在の消費の弱さをすべて説明することもできないということです。

食料は、支払う金額が増えても実質では減っている

日々の暮らしに近いところでは、食料の動きが目に留まります。

7月の食料支出は95,681円。

前年同月比では名目2.2%増でしたが、物価変動の影響を除くと実質1.3%減となりました。

家計が実際に食料へ支払った金額は前年より増えているのに、実質的な消費水準は前年を下回っています。

ここから「買う量が1.3%減った」とまでは言えません。

購入する食品の種類や価格帯、外食との組み合わせなどによっても変わるからです。

ただ少なくとも、前年より多くのお金を支払っても、実質的な消費は増えていないという状況は確認できます。

物価上昇が家計へ届いていることを感じやすい部分です。

減っている支出がある一方、教養娯楽は増えている

7月の主要費目を見ると、すべての支出が同じ方向に動いているわけではありません。

光熱・水道、交通・通信、保健医療、食料などが実質で前年を下回る一方、家具・家事用品や教養娯楽は前年を上回りました。

2026年7月の主要費目の実質前年比。光熱・水道や交通・通信は減少し、教養娯楽は増加しているグラフ


  • 光熱・水道 ▲9.2%
  • 交通・通信 ▲8.5%
  • 保健医療 ▲6.0%
  • 食料 ▲1.3%
  • 家具・家事用品 +0.7%
  • 教養娯楽 +4.8%

さらに細かく見ると、宿泊料や外食など、7月の消費を押し上げた項目もあります。

一つの「消費」という数字の中に、減っている支出と増えている支出が同時に存在しています。

家計は「使わない」のではなく「選んでいる」のか

ここからは、家計の視点で考えてみます。

食料のような生活に欠かせない支出では、支払う金額が増えている一方、実質消費は減っています。

その一方で、教養娯楽は増え、宿泊料や外食などが消費を押し上げました。

こうした数字を見ると、家計全体が一様に財布を閉じているというより、物価や収入の状況を見ながら、何にお金を使うのかを選んでいる可能性も考えられます。

大きな買い物は延期する。

日々の買い物では価格を意識する。

それでも旅行や外食など、自分たちが残したい支出にはお金を使う。

実際の家庭では、このような組み合わせもありそうです。

ただし、これは家計調査から直接確認できる事実ではありません。

月次の家計調査は多くの世帯を集計した数字です。同じ家庭が食費を減らして、その分を旅行へ回したと判断することはできません。

現時点では、支出項目によって動きが分かれているところまでを事実として確認し、その背景は今後も観察していきます。

所得にも7月特有の動きがあった

消費を考えるときには、収入側も見ておく必要があります。

二人以上の勤労者世帯では、7月の実収入は689,476円。

前年同月比では名目1.7%減、実質3.8%減でした。

ただし、内訳を見ると少し様子が違います。

世帯主の定期収入は391,463円で、名目では2.2%増。物価変動を除くと前年と同じ水準でした。

一方、臨時収入・賞与は実質11.5%減となっています。

7月の実収入が減ったことを、そのまま「毎月の賃金が大きく悪化した」と考えることはできません。

定期収入は、少なくとも7月時点では名目の伸びが物価上昇分とほぼ同じところまで来ています。

一方で、賞与の減少が世帯全体の収入を押し下げました。

所得が改善すれば、すぐに消費が戻るわけでもなさそうだ

以前の家計調査では、所得の改善に比べて消費が弱く、「増えた所得がそのまま消費には回っていないのではないか」という点を観察しました。

7月は賞与の減少もあり、実収入そのものが実質で減少しています。

勤労者世帯の可処分所得は554,381円で実質3.1%減でしたが、消費支出は322,866円で実質6.8%減。

平均消費性向は58.2%で、前年同月の60.5%から2.3ポイント低下しました。

収入の減少以上に、消費が弱かったことになります。

ただし、これだけで「家計の節約志向がさらに強まった」と断定するのも早そうです。

7月は賞与、自動車購入、住宅修繕など、月による変動が大きい項目の影響を受けています。

平均消費性向も季節調整値では前月より上昇しています。

一つの月だけで家計心理まで判断せず、何か月か続けて確認する必要があります。

家計チームで見るなら、「いくら減らしたか」だけでは足りない

家計を見直すとき、「先月よりいくら節約できたか」は分かりやすい数字です。

ただ、今回の家計調査を見ると、それだけでは暮らしの変化を捉えきれないことも分かります。

食料では、支払額が増えても実質消費は減っています。

自動車や住宅修繕のように、年によって大きく変わる支出もあります。

一方で、教養娯楽のように増えている支出もあります。

家計チームとして見るなら、

何を減らしたのか。
何を維持したのか。
何には、あえてお金を使ったのか。

この3つを一緒に見た方が、家計の状態をつかみやすいのではないでしょうか。

節約することそのものではなく、限られたお金をどこへ配分するか。

これは、以前書いた「節約だけでは、家計は育たない」という考え方にもつながります。

現時点では、まだ分からないこともある

7月までの数字から、実質消費が前年を下回る状態が続いていることは確認できました。

一方で、まだ分からないこともあります。

食料の実質減少は続くのか。

光熱・水道の減少には、価格や政府の支援、使用量がそれぞれどの程度影響しているのか。

教養娯楽への支出は今後も維持されるのか。

定期収入が物価上昇を上回る状態へ進むのか。

賞与の減少は7月特有のものなのか。

そして、家計の消費性向はどう変わっていくのか。

一つの数字から答えを決めず、次の数字で確かめたいところです。

今後も同じ数字を追っていく

今後の家計調査では、消費支出全体だけでなく、

  • 住居等を除く消費支出
  • 食料
  • 光熱・水道
  • 教養娯楽
  • 勤労者世帯の定期収入
  • 平均消費性向

も継続して見ていきます。

毎月、統計が発表されるたびに記事を書く必要はないと考えています。

ただ、同じ数字を追っていけば、一時的な変化なのか、それとも家計のお金の使い方そのものが変わりつつあるのかが、少しずつ見えてくるはずです。

まとめ|「消費が減った」の一歩先を見る

2026年7月の家計調査では、二人以上の世帯の消費支出が実質3.6%減り、前年割れは8か月連続となりました。

消費が弱い状態が続いていることは確かです。

ただ、その3.6%の中には、自動車購入や住宅修繕など、月によって大きく変わる支出も含まれています。

それらを除いても実質消費は前年を下回る一方で、教養娯楽のように増えている支出もあります。

現時点では、家計があらゆる支出を一様に減らしているというより、物価や所得の状況の中で、支出するものを選んでいる可能性があります。

それが一時的なものなのか。

それとも、家計のお金の使い方そのものが変わりつつあるのか。

今後も同じ数字を追いながら確かめていきます。


参考資料

総務省統計局「家計調査報告(二人以上の世帯)2026年7月分」
公表日:2026年9月4日

※この記事では、2025年基準の消費者物価指数を用いた遡及改定後の実質増減率を使用しています。